賃貸アパートでプロパンガスはやめとけといわれるのはなぜ?メリット・デメリットも解説

賃貸アパートへの入居時に、手続きするのが電気・ガス・水道の各種ライフライン。

ガスの種類は都市ガスとプロパンガスの2つで、アパートによってどちらを使用できるか決まっています。

そのため、ガスの種類を選びたい場合は物件探しの段階から意識しておくのが大切です。

今回は、プロパンガスのメリットやデメリットについて解説します。

賃貸アパートでプロパンガスはやめとけといわれてしまう理由も詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

プロパンガスとは

プロパンガスとは、プロパンとブタンという2つの成分を主とした液化石油ガス(LPG)のこと。

LPガスとも呼ばれるプロパンガスは、冷却・加圧すると液体になり、気体の状態と比べて体積を250分の1にまで小さくできるのが特徴です。

持ち運びのしやすさを生かして、プロパンガスは専用のボンベ内に充填したガスをガス事業者が各家庭に配送して供給します。

プロパンガスと都市ガスの違い

プロパンガスと都市ガスの主な違いは、以下の通りです。

都市ガスプロパンガス(LPガス)
主成分メタンを主成分とする天然ガスと、液化天然ガス(LNG)プロパン・ブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)
供給の仕方ガス管を通して各家庭に供給ガス事業者が各家庭にタンクを配送

都市ガスはガス管を通して供給され、プロパンガスはガス事業者が各家庭に直接配送する仕組みです。

どちらのガスを使用するかは部屋ごとではなく、アパート全体で決まっています。

ガスの種類にこだわりがある場合は、物件探しのときからよく確認しておきましょう。

プロパンガスのメリット

ガス事業者によって各家庭に配送されるプロパンガスは、都市ガスにないメリットがあります。

プロパンガスならではのメリットは、次の2つです。

  • 災害に強い
  • 使う場所を選ばない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

災害に強い

各家庭に個別で配送するプロパンガスは、地震などの自然災害でライフラインが遮断されたときも復旧が早く、災害に強いガスです。

日本LPガス協会(※)によると、東日本大震災での都市ガスの全面復旧が5月3日だったのに対し、LPガスは2週間近く早い4月21日に復旧しています。

また日本LPガス協会では、各家庭に通常2本ずつプロパンガスの容器が配送されることに注目。

2本のうち1本を在庫として確保できるため、突然の災害時でも1ヶ月以上ガスを使い続けられるとしています。

※参考|日本LPガス協会「LPガスの特徴/災害に強い」

使う場所を選ばない

プロパンガスは、容器に詰めたガスを事業者が直接配送するため、地面に埋め込むガス管が必要ありません。

そのため坂の多いエリアなどガス管を敷くのが難しい場合も、プロパンガスなら簡単に使用可能です。

また宅地として土地を開発した場合、都市ガスはガス管の引き込みが必須のため、別途工事費用がかかります。

場所を選ばずに使いやすく、ガス管工事不要で使用開始できる点が、賃貸アパートでプロパンガスがよく使われている理由の1つです。

プロパンガスのデメリット

メリットだけでなく、プロパンガスには個別配送ならではのデメリットもあります。

  • 都市ガスと比べて料金が高い
  • ガス会社によって料金の差が大きい

2つの主なデメリットについて、詳しく見ていきましょう。

都市ガスと比べて料金が高い

個別配送するプロパンガスは、配送に手間がかかり都市ガスと比べて料金が高くなりやすいです。

あくまで目安ですが、プロパンガスは都市ガスと比べて、およそ1.7倍~1.8倍も料金が高いともいわれています。

ガス管引き込み時の工事が不要なのは魅力ですが、日常のガス料金が高くなりやすい点に注意が必要です。

ガス会社によって料金の差が大きい

2017年4月に都市ガスの規制料金が廃止され、料金の自由化が進んでから、各ガス会社は自由に料金を設定できるようになりました。

都市ガスはもともと規制料金が定められていたため、自由化以降も極端な値上げや値下げを行う企業は少なく、安定した料金設定が続いています。

一方、自由料金制を取り入れているのがプロパンガス。

プロパンガスは国の認可が必要な規制料金制であったことがないため、各事業者が自由に料金を設定できます。

また個別配送の仕組みからエリアによってガス事業者がわかれており、事業者が価格競争を行う機会も多くはありませんでした。

そのためガス会社によって料金の差が大きく、選ぶ事業者によって金額が2倍近く高いという事態にもなっているのです。

賃貸アパートでプロパンガスがやめとけといわれる理由

賃貸アパートを探していると、「プロパンガスはやめとけ」という意見も耳にします。

主な理由としてあげられるのは、次の5つです。

  • ガス代が高くなりやすい
  • 入居者がガス会社を選べない
  • 都市ガスに切り替えできない
  • 設備費が上乗せされる
  • 開栓時に保証金が必要になる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ガス代が高くなりやすい

プロパンガスは都市ガスと比べてガス料金が高くなりやすいため、やめとけといわれることが多いです。

災害への強さは誰もが共通して得られるメリットですが、どこでも使えるという点は、アパートの所有者や戸建て住宅を建てる人にとって特に大きく感じられるメリットでしょう。

一人暮らしでガス代を少しでも抑えたい場合は、ガスの種類にもこだわって物件を選ぶのが大切です。

入居者がガス会社を選べない

プロパンガスは、ガス事業者によって設定料金が異なります。

契約は大家さんや管理会社がアパート全体分をまとめて行うため、入居者はガス会社を選べません。

プロパンガスを使うアパートに入居するなら、事前にどこのガス事業者と契約しているかを調べ、設定料金が高すぎないかを確認しておくとよいでしょう。

都市ガスに切り替えられない

都市ガスはガス管で供給されるため、基本的にプロパンガスから都市ガスへの切り替えはできません。

また、ガスコンロなどの機器類も都市ガス用とプロパンガス用では仕様が異なります。

コンロ類は物件に備え付けられたものを使うのが一般的ですが、もし手持ちの機器を使いたい場合は、ガス種類をよく確認しておきましょう。

設備費が上乗せされる

ガスボンベさえ設置できれば、プロパンガスは場所を選ばずに使用できますが、建物にガス管の設置が必要です。

プロパンガスはガス事業者ごとの料金差が大きく、金額が不透明な部分もあることから、設備使用料が上乗せされる場合があります。

特にアパートでは新築時のガス管設置をプロパンガス会社が負担することが多く、設置費の回収をガス代に上乗せて行うのが一般的。

さらに1階にガスボンベがある場合、2階まで届けるための長いガス管が必要になるため、1階と2階でガス料金が異なるケースもあります。

開栓時に保証金が必要になる

賃貸アパートの入居時は、入居者立会いのもとでガス会社による開栓作業が行われます。

都市ガスの場合、開栓に費用は発生しませんが、プロパンガスの場合は保証金としておよそ1万円~2万円を支払うのが一般的。

保証金はガス料金を滞納した場合の支払いに充てられ、多くのケースでは退去時に全額返却されます。

いずれ返却される費用ではありますが、出費のかさむ入居時に保証金を求められるのは家計にとって負担です。

全体的な費用が高くなりやすく、都市ガスに比べて自由度が低いのも、賃貸アパートでプロパンガスはやめとけといわれる理由です。

一人暮らしの賃貸アパートがプロパンガス…後悔しないためのポイント

料金を抑えるために、できるだけ都市ガスを利用したいと思っていても、エリアによっては都市ガスが普及しておらず、プロパンガスの物件のみという地域もあります。

  • 入居前に料金の目安を調べておく
  • ガス代だけではなく家賃も含めて検討する
  • 光熱費の節約を意識する

プロパンガスのアパートに入居するにあたって、後悔しないために押さえておきたい3つのポイントを見ていきましょう。

入居前に料金の目安を調べておく

入居後にプロパンガスの事業者変更はできませんが、入居前にあらかじめガス代の目安を調べておくことはできます。

長年自由料金体制が続いているプロパンガスは、料金が不透明になりやすく、問題視する声もあがっていました。

そこで2021年6月、経済産業省と国土交通省は、プロパンガス業界と不動産業界を対象に、入居前のプロパンガス料金の明示を周知。(※)

あくまで要請のため強制力はありませんが、入居者が希望すれば、プロパンガス料金を入居前に把握できるため、不当に高いプロパン会社を避けられます。

入居後は自由に変更できないため、事前に情報を集めて適切な金額でガスを利用できるように工夫しましょう。

※参考|経済産業省資源エネルギー庁「賃貸集合住宅におけるLPガス料金の透明化」

ガス代だけではなく家賃も含めて検討する

プロパンガスと都市ガスを比べると、ガス代の高さから都市ガスを使用する物件が魅力的に映ることもあるかもしれません。

築年数などの違いもありますが、物件によってはプロパンガスを使用しているアパートは他と比べて家賃が抑えられている場合もあります。

家賃は毎月決まった固定費のため、節約の工夫などで負担を縮小できるものではありません。

しかしガス代ならプロパンガスの使用で価格が高くなりがちであっても、工夫次第で節約が可能です。

生活費を抑えたい場合は、ガス代が高くなるからという理由だけでプロパンガスの物件を避けずに、エリアの家賃相場も比較しながら物件を選んでいくとよいでしょう。

光熱費の節約を意識する

地域によっては、ガス管が敷かれていないため、プロパンガスに限定されているところもあります。

ガス代が高くなることが不安なら、プロパンガスを使いはじめるのをきっかけに、光熱費の節約を意識してみましょう。

  • 節水シャワーを使う
  • シャワーを流しっぱなしにせず洗面器を使う
  • 給湯温度の設定を1℃下げる
  • コンロの火はなべ底からはみ出さないように使う

これらの工夫を取り入れるだけでも、日常的なガス代の節約につながります。

プロパンガスは都市ガスと比べて、火力が高いことも魅力です。

災害時の安心感や高い火力など、プロパンガスならではの魅力にも目を向けながら、物件を選んでいきましょう。

まとめ

プロパンガスと都市ガスは、同じ家庭で使われるガスであっても、主成分や供給方法が異なります。

ガスの種類にこだわって入居するアパートを決めるなら、不動産会社の担当者に希望を伝えて、効率よく物件を探しましょう。

エリアによってはガスの種類が限定されるため、地域性も意識しながら物件を選んでいくことをおすすめします。

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